鉄道事業者

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鉄道事業の一例(写真は、南海電気鉄道が運行する「ラピート」)

鉄道事業者(てつどうじぎょうしゃ)とは、鉄道事業法第7条で「鉄道事業の許可を受けた者」と規定される事業体である。

概要[編集]

鉄道事業法上は、鉄道事業をする者に制限がなく、株式会社以外の公益法人宗教法人などの法人や個人でも事業をすることはできるようになっている。ただし実際には、その許可を受けた事業体の多くは株式会社のため、一般には鉄道会社と呼ばれる。

類似のものとして軌道法による「軌道経営者」・「軌道会社」があるが、一般的に鉄道事業者(鉄道会社)と区別して認識されることは少なく、これを含めて広義の鉄道事業者と解されることも多い。ただし、法律やその規制が大きく異なるので、事業形態が全く異なる場合も多い。軌道法による軌道経営者については軌道法を参照のこと。

鉄道事業者と軌道経営者を総称して「鉄軌道事業者」と呼称する場合もある。

事業者によっては、東京急行電鉄などのように鉄道軌道の両路線を兼営しているケースや、新交通システムのように1本の路線に両者が混在しているケースもある。

鉄道事業形態による区分[編集]

鉄道事業法第2条により、次のような鉄道事業の区分がある。

一般的には、実際の車両を保有し、列車の運行管理を行う第一種と第二種鉄道事業を行う事業体を鉄道事業者と呼ぶことが多い。

第一種鉄道事業[編集]

鉄道施設一式を保有するとともに列車の運行も行う。ほとんどの鉄道事業者が該当する。

なお、鉄道事業法第59条の規定により鉄道建設・運輸施設整備支援機構日本高速道路保有・債務返済機構には同法が適用除外されており、これらから鉄道施設を借り受けて列車の運行を行う鉄道事業者も第一種鉄道事業者となる。

第二種鉄道事業[編集]

  • 自らが敷設した以外(第一種や第三種鉄道事業者が保有)の鉄道線路を使用して、鉄道による旅客または貨物の運送を行う事業。車両と施設だけを保有、路線は借り物となる。

JR貨物の営業路線のほとんど(JR旅客各社等が第一種)や、青い森鉄道の全線(青森県が第三種)、北総鉄道の小室以東(千葉ニュータウン鉄道が第三種)、都営地下鉄三田線白金高輪目黒間(東京地下鉄が第一種)、のと鉄道の全線(JR西日本が第一種または第三種)、成田空港に乗り入れるJR東日本成田線成田成田空港間・京成電鉄本線駒井野信号場~成田空港間(ともに成田空港高速鉄道が第三種)など。東海交通事業JR東海が第一種)は運転開始当初は車両も借り物だった。

また、神戸市内の鉄道路線網の一翼を構成する神戸高速鉄道は、自身が第三種であり、ここに乗り入れる阪急電鉄阪神電気鉄道山陽電気鉄道神戸電鉄北神急行電鉄が第二種となっている。ただし(当初から神戸高速鉄道の路線ではない北神線を除き)運賃計算など営業上の扱いは、旧法時代の名残と第二種事業者重複のため、神戸高速鉄道独自の路線として扱っている。多くの場合は第三種事業者が別に存在する場合でも営業上は第二種事業者の区間とみなすため、特殊な例となっている。駅営業は神戸高速鉄道が逆委託される形で行っている。

第三種鉄道事業[編集]

  • 鉄道線路を第一種鉄道事業を経営する者に譲渡する目的をもって敷設する事業、及び鉄道線路を敷設して該当鉄道線路を第二種鉄道事業を経営する者に専ら使用させる事業。

北総線の小室以東の千葉ニュータウン鉄道や神戸高速鉄道のほかに、都市部の新線建設の際に鉄道施設の建設・保有を行う第三種鉄道事業者として設立される第三セクター会社が該当する。後者の例としてはJR東西線の施設を保有する関西高速鉄道があり、実際の運行を行うJR西日本が第二種。

索道事業[編集]

  • 他人の需要に応じ、索道による旅客または貨物の運送を行う事業。

「扉を有する閉鎖式の搬器を使用して旅客又は旅客及び貨物を運送する索道」を普通索道、「外部に開放された座席で構成されるいす式の搬器を使用して旅客を運送する索道」を特殊索道という。前者はロープウェイやゴンドラリフト等、後者は夏山リフトやスキーリフト、Tバー・Jバーリフト等のことである。

専用鉄道[編集]

  • 専ら自己の用に供するため設置する鉄道であって、その鉄道線路が鉄道事業の用に供される鉄道線路に接続するもの。

専用鉄道は、貨車の荷主の工場倉庫などへの最寄駅からの貨物引込線のこと。鉄道貨物輸送の盛んだった1970年代までは、工場や港湾地帯を中心に多く存在していたが、1985年以降の鉄道貨物輸送方式の車扱貨物からコンテナへの転換により、ほとんどが廃止された。

特定目的鉄道事業[編集]

  • 景観の鑑賞、遊戯施設への移動その他の観光の目的を有する旅客の運送を専ら行うもの。

鉄道事業法第5条第2項で「特定の目的を有する旅客の運送を行うもの」として規定されている鉄道事業で、具体的には鉄道事業法施行規則第6条の2に規定されている。遊園地への客の送迎のための鉄道など、公共性の低いものについてより簡略化された手続きで鉄道事業が行えるようにしたものである。通常の鉄道事業の許可権限は国土交通大臣にあるが、特定目的鉄道事業については地方運輸局長に委任される。

2000年3月の鉄道事業法改正によって新設された区分であり、2008年現在ではこれに基づいて鉄道事業を行っている事業者はない(嵯峨野観光鉄道は第2種鉄道事業者、黒部峡谷鉄道は第1種鉄道事業者である)。

福岡県北九州市では門司港レトロ地区を通る門司港~和布刈公園間(門司港レトロ観光線)の特定目的鉄道事業を2008年3月13日に申請し、制定後初の特定目的鉄道事業による事業者として、許可がおりている[1][2]

また1997年に廃止された信越本線横川軽井沢間(碓氷峠)の一部で、「園内遊具」として鉄道車両を運行させている碓氷峠交流記念財団が、横川~軽井沢間の全区間について特定目的鉄道事業の申請を予定している(詳しくは碓氷峠を参照)。

経営形態による区分[編集]

鉄道事業者(軌道を含む)の経営組織形態は、以下のとおり区分される。

株式会社[編集]

鉄道事業者のほとんどが株式会社形態をとっている。純民間資本による私鉄各社のほか、JR東日本・JR東海・JR西日本を除く独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が株式を保有するJR各社、地方公共団体と民間会社が共同出資する第三セクターも株式会社である。このうち、次の23社が株式を公開(上場)している。ほかに鉄道事業が本業ではないが、関電トンネルトロリーバスを運営する関西電力も上場企業である。

以下は、いわゆる店頭銘柄。

公営企業[編集]

地方公営企業(交通局。公営交通の一形態)、あるいは地方公共団体が直接経営する企業形態で、2004年4月時点で次の14事業者がある。

他に不定期の貨物輸送のみであるが、旧新潟臨海鉄道の施設を新潟県2002年11月21日に引き継いだ、黒山駅分岐新潟東港専用線(第2種事業者はJR貨物)もある。

戦後、鉄軌道事業を行っていたものの、現在では廃止した公営事業者は

大都市(政令指定都市)の地下鉄が公営企業によって経営されているのは、地下高速鉄道整備事業費補助制度に基づく地下鉄建設費の補助金が、原則として地方公共団体及び旧営団だけに支給されたためである。

特殊法人[編集]

過去に鉄道(軌道)事業を行っていた次の特殊法人があった。

財団法人[編集]

なお過去に期間限定免許を受け、鉄道(軌道)事業を行った次の博覧会協会も、財団法人である。

宗教法人[編集]

その他の経営形態[編集]

横浜市にあるこどもの国線社会福祉法人こどもの国協会が第3種鉄道事業を行っていたが、通勤路線化のため、1997年に第3種鉄道事業を横浜高速鉄道に譲渡した。

このほか、昭和初期(1920年代)までの時代には、個人経営(人車軌道など)や合名会社合資会社協同組合(協業組合)の小規模な鉄道事業者も存在した。

JRと私鉄、第三セクターの区分[編集]

1987年3月31日まで、法的に国鉄私鉄という二つの区分が存在した。国鉄は、日本国有鉄道法に基づき公社としての日本国有鉄道が経営した鉄道である。これに対し地方鉄道法または軌道法に基づき民間企業および公営企業が経営した国鉄以外の鉄道・軌道を私鉄(または民鉄)と呼び、私鉄の路線は会社線社線)と呼んだ。

国鉄の分割民営化により、すべての鉄道事業者が鉄道事業法および軌道法に管轄されることになった。JRグループ)は一般的には私鉄(民鉄)とは呼ばないが、JR東日本・西日本・東海に関しては完全民営化された「私企業」のため、実際は私鉄(民鉄)の一種であるといえる。また、それ以外のJRグループ各社は「公私合同企業」である。「会社線」という呼称についても、JRの乗車券に例えば「東日本会社線」のように書かれてはいる。

旧国鉄の特定地方交通線の転換または整備新幹線開業に際して経営分離された並行在来線の受け皿として、また鉄道建設公団の地方AB線(地方開発線・地方幹線)の経営主体として設立された第三セクターの鉄道事業者についても、地図記号では私鉄とされているなど、一般的には私鉄に含まれる。ただし、別途第三セクターとして別の区分をすることもある。これは、営業路線の歴史的区分によるものであり、例外もあるが、時刻表でもJR路線の関連ページに記載されていることが多い。ただし、同じ第三セクターの鉄道事業者でも、大都市圏の新交通システムモノレール各社、臨海工業地帯の貨物鉄道(臨海鉄道)会社、大都市周辺の都市開発に伴う通勤新線を敷設するために設立された北総鉄道北大阪急行電鉄大阪府都市開発などの鉄道会社、万葉線えちぜん鉄道の元々の私鉄路線を引き継いだ鉄道会社は、この区分によらず私鉄として扱われることが多い。

なお、JR各社及び旧国鉄線を引き継いだ第三セクター各社は青い森鉄道を除き、ほとんどの民営鉄道会社が加盟する社団法人日本民営鉄道協会に加盟していない。ただし入会は任意であり、旧国鉄線やJR線を引き継いだ鉄道会社も入会は可能である。

地図記号では国鉄線と私鉄線で区分されていたが、現在でも「JR」と「JR以外の鉄道」(第三セクター鉄道を含む)で分けられている。

大手私鉄・準大手私鉄・中小私鉄の区分[編集]

JRを除く私鉄についても、首都圏や関西圏を中心に、従業員が数千人、数万人規模の会社が存在する。これらは、他の業界同様に社会全体に対して大きな影響を与えるためこれらを大手私鉄(大手民鉄)と呼び、他の私鉄会社とは区別する。現在は東京地下鉄(東京メトロ)を含めた16社をさす。帝都高速度交通営団民営化による東京地下鉄発足前は、国土交通省鉄道局などの統計資料などでは帝都高速度交通営団を除いた15社を大手私鉄としていた。

また、大手私鉄に次ぐ規模を持つ私鉄を準大手私鉄(準大手民鉄)と呼ぶことがある。準大手私鉄の明確な定義はないが、現在、6社が準大手私鉄とされている。大手私鉄・準大手私鉄を除く私鉄は中小私鉄(中小民鉄)と呼ばれる。

準大手私鉄と中小私鉄については、他にも都市近郊私鉄(都市近郊鉄道)地方私鉄(地方鉄道)の2つに分類される場合もある。明確な定義はないものの、前者は大都市の近郊で1時間に数本程度運行している鉄道(時刻表で3段書きになっているなど)をさし、後者はそれ以外の私鉄を含める。

異業種への参入[編集]

鉄道事業者の多くが、鉄道事業だけではなく、直営あるいは子会社などで、各種の関連事業や異業種の事業を行っている。以下のような事例がある。

※主な例

なおこのほか、日本においては戦前の電力統制以前に発電配電などの電力事業を兼業していた事業者もあった。現在でも東京都交通局が発電事業を行っている[4]

異業種からの参入[編集]

元来は鉄道事業者ではない異業種の事業者が、直営あるいは子会社などで鉄道事業を行う、もしくは経営破綻した鉄道事業者の再建支援を行っている例として以下のようなものがある。

  • 参入者自身が直営で鉄道事業を行っているもの、行っていたもの
  • 鉄道事業を行うために設立した子会社で間接的に運営するもの
  • 既存の鉄道事業者を買収し、経営傘下に置いて鉄道事業に参入したもの
    • 紀州鉄道 - 1928年に御坊臨港鉄道として開業した路線。災害やモータリゼーションの進展によって廃止の危機に追い込まれていたものを、1972年に東京の磐梯電鉄不動産が約1億円で買収。翌年1月、「紀州鉄道」に社名を変更。現在は不動産・ゴルフ場・リゾート開発会社の鶴屋産業の傘下となっている。
    • 銚子電気鉄道 - 1990年に経営権が千葉交通から東金市の建設業・内野屋工務店に移転。子会社「銚電恒産」を設立してその子会社となった。しかし、1998年に同社が自己破産申請をしたため、現在では銚子市が経営支援を行っている。
    • 2005~2006年には、投資ファンドの「村上ファンド」が阪神電気鉄道の株式を取得、経営に乗り出そうとした例がある。
  • 経営破綻した鉄道会社を、再建のため異業種の企業やその出身者が経営支援しているもの
    • 水間鉄道 - バブル期の過大投資がたたり、2005年に会社更生法を申請。大阪市に本社をおく外食チェーン・グルメ杵屋が支援企業に決定し、経営再建がなされた。現在、グルメ杵屋の100%子会社である。
    • 高松琴平電気鉄道 - 自社ターミナルに建設したコトデンそごうがそごうグループ破綻の影響で破産し、その影響で2001年に民事再生法を申請して経営破綻した。地元に本社を置く大手食品加工メーカー、加ト吉の支援の元で経営再建をした。
    • しなの鉄道 - 長野県の第三セクター鉄道。経営再建のために、最初は格安航空券販売で知られる旅行代理店エイチ・アイ・エス、次に格安航空会社のスカイマークから社長を迎えて経営再建を果たした。資本関係上の提携や買収をした訳ではなく、厳密には「異業種からの参入」とは言い難いものの、2代続けて航空関連業界関係者から経営者を招聘して経営再建した点ではユニークである。
  • 行政が地方鉄道存続のために、経営企業を公募したもの
    • 和歌山電鐵 - 廃線となる南海貴志川線を、和歌山市などの自治体が公的な財政補助を前提に存続させることになった。しかし、沿線自治体の財政状況の関係で第三セクター設立は困難だったために、経営企業を公募した。不動産会社や外食産業など何社か異業種からの応募もあり、異業種からの参入の可能性もあった。最終的には、他地域の鉄軌道事業者である岡山電気軌道が経営することに決まった。

かつては鉱山鉄道のように鉱業会社が運営していた鉄道、あるいは、森林鉄道のように林業者や営林署が運営していた鉄道もあった。しかし現在では鉱業・林業の衰退、モータリゼーションの発達などにより、ほぼその役割を終えた。こうした鉄道としては、太平洋石炭販売輸送が現存している。

表記[編集]

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このような字を使う会社もある

鉄道事業者の中には、大井川鐵道真岡鐵道和歌山電鐵など、あえて旧字体の「鐵」を用いて「鐵道」「電鐵」と表記する例が見られる。これは「鉄」の漢字が「金を失う」と書くため、縁起が悪いからだといわれる。

また現在のJR四国を除くJR各社では、ロゴ(デザイン文字)においては「鉄」の字の旁(つくり)を「失」から「矢」にした「鉃」の字を用いて、「鉃道」と表記している。これは、「金が矢のように入る」になるからだという話と、当時の旧国鉄の赤字経営から「金を失うことを避けたい」という意向があったという話があるといわれている。かつては近畿日本鉄道(近鉄)でも同様の字を使用していた。

しかし、「鉃道」の文字を見た小学生がテスト等で誤記することが心配され、教育的に好ましくない事態となっている。近鉄が1967年に使用を停止したのも、それによる沿線住民からの指摘が理由である。なお、本来「鉃」の字はの意で、全く違う意味の字である。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. 門司行レトロ地区に観光鉄道を許可 国土交通省九州運輸局 2008年6月4日
  2. 門司港レトロ観光列車に係る鉄道事業の許可について 平成筑豊鉄道 2008年6月4日
  3. 中国新聞社ホームページ・CARP年表、1955年
  4. 東京都交通局 発電事業

外部リンク[編集]