ウィザーズ・ブレイン

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ウィザーズ・ブレイン』 (Wizard's brain) は、電撃文庫から刊行されている三枝零一ライトノベル作品である。イラスト純珪一

第7回電撃ゲーム小説大賞(現・電撃小説大賞)〈銀賞〉受賞作品で、三枝零一のデビュー作。

応募時タイトルは『魔法士物語』。

概要[編集]

本作品では、情報制御理論(後述の設定参照)と言う架空の理論に基づき、登場人物たちが「魔法」を使う。この「魔法」を使用できる者の事を「魔法士」と呼ぶ。本作品は、この「魔法士」を中心に物語が進行する。

世界観[編集]

21世紀末に人口問題解決のため、情報制御理論を活用することによって外部環境に影響されず、完全自給自足の生活環境を提供し、1,000万人が生活できるドーム型の積層都市「シティ」が世界各地に建造され、行政単位がシティごとになったことに伴いすべての国家が消滅した世界。

2186年5月14日、北極と南極に一機ずつ設置された大気制御衛星の原因不明の暴走事故によって、旱魃対策用の遮光性の気体が大気中にばら撒かれた。これによって世界は暗闇に包まれ、エネルギーの90%以上を太陽光発電に頼っていた人類は致命的なダメージを受けた。この事故が引き金となり、第3次世界大戦が勃発。とある魔法士の同調能力によって核融合炉が暴走し、アフリカ大陸が世界地図から消えた後に終戦を迎えるが、すでにすべてが手遅れだった。太陽光が届かず、気温は零下が当たり前となり、残された僅かな地熱発電などを頼り人々は細々と生きていた。変わり果てた地球で、人類は滅亡の危機に直面している。

また、厳しい環境の影響を受けない「シティ」も、かつては2000以上もあったが衛星暴走事故とそれに続いた第3次世界大戦によって、終戦後には7つ(「ロンドン」「ベルリン」「モスクワ」「マサチューセッツ」「ニューデリー」「シンガポール」「神戸」)にまで減少していた。

※余談だが、作者の三枝零一兵庫県出身である。

特徴[編集]

このシリーズの特徴として冒頭の四行詩と、あとがきでの次回予告がある。

作者の筆が遅く、巻と巻の間が非常に空くので、イラストが前巻と比べると変わる。

既刊一覧[編集]

  • ウィザーズ・ブレイン ISBN 4840217416 2001年2月25日 初版発行
  • ウィザーズ・ブレインII 楽園の子供たち ISBN 4840220123
  • ウィザーズ・ブレインIII 光使いの詩 ISBN 484022191X
  • ウィザーズ・ブレインIV 世界樹の町〈上〉 ISBN 4840222738
  • ウィザーズ・ブレインIV 世界樹の町〈下〉 ISBN 4840225761
  • ウィザーズ・ブレインV 賢人の庭〈上〉 ISBN 4840230439
  • ウィザーズ・ブレインV 賢人の庭〈下〉 ISBN 4840231478 2005年9月25日初版発行
  • ウィザーズ・ブレインVI 再会の天地〈上〉 ISBN 4840236380 2006年12月25日 初版発行
  • ウィザーズ・ブレインVI 再会の天地〈中〉 ISBN 4840238111 2007年04月25日 初版発行

注意以降に核心部分が記述されています。

作品解説[編集]

ウィザーズ・ブレイン[編集]

何でも屋を営む魔法士の少年・錬は、ある依頼を受け、フィアと名乗る少女をシティから奪う。それを皮切りに起こる、シティ・神戸のマザーコアの交換を巡る事件を描く。そのテーマは「大多数のために1人を殺すのか、1人のために大多数を殺すのか?」という難しいもの。舞台は2198年2月シティ「神戸」。


ウィザーズ・ブレインII 楽園の子供たち[編集]

龍使い」の話。フリーの便利屋ヘイズは、4人の「龍使い」の少女少年と出会い、彼らと交流を深めていく。しかし、「龍使い」に隠された秘密は、やがて途方も無い悲劇を生む… 舞台は2198年6月、ヒマラヤ山脈上空。シティ「北京」が残した実験施設。


ウィザーズ・ブレインIII 光使いの詩[編集]

光使い」の話。「双剣」の騎士ディーは、光使いと黒衣の騎士に出会い、一連の戦いの過程で「真の強さ」を知る。舞台は2198年7月シティ「マサチューセッツ」。


ウィザーズ・ブレインIV 世界樹の街[編集]

人形使い」の話。確実な方法で1つのシティを救うのか、奇跡に近い方法で全世界を救うのか。IとIIの主要キャラクター、そして人形使いエドワード・ザインが「世界樹の種」を巡って争う。舞台は2198年9月シティ「ロンドン」。


ウィザーズ・ブレインV 賢人の庭[編集]

Iと対になる作品で、時系列的にはⅣとほぼ同時期にあたる。IとIIIの主要キャラクターが登場する。フィアを救えた錬と異なり、かつてマザーコアとなった少女を救えなかった「賢人会議」こと「サクラ」と、シティに住む人々のため戦う「イル」との戦いと、真の強さを求めるディーが下した決断が描かれる。舞台は2198年10月シティ「メルボルン」跡地。


ウィザーズ・ブレインVI 再会の天地[編集]

ウィザーズ・ブレイン「本編」と銘打ち、新展開に突入。行方不明の姉と兄を探す錬と、その協力を請け負ったヘイズ。組織の拡大を図る賢人会議のメンバーたち。シティの命令で賢人会議を追うイルとクレア。各々の目的でシティ・ニューデリーを訪れた彼らは、ニューデリーのマザーコア交換計画を巡る事件に関わることになる。

登場キャラクター[編集]

シティ神戸(及び近郊の町)[編集]

天樹 錬(あまぎ れん) … 『元型なる悪魔使い』
黒髪黒目の少年。天樹健三が最後に作成した魔法士で、外見年齢は14歳、実年齢は9歳。健三が錬を作成中に死亡したため、出生後から真昼と月夜に発見されるまでの期間を培養層の中で過ごすことになったが、その間に多くの人間にその身を狙われ、自衛の為に彼らを殺害した過去を持つ。現在は前向きな性格の少年であり、自分を育ててくれた真昼と月夜のことは家族として大切に思っている。シティ・神戸の一件でフィアと出会い、彼女をマザーコアとして利用される運命から開放した。近頃の悩みは身長が伸びず、フィアに背が追いつかれそうなことだとか。
フィア … 『天使』
金髪緑眼の少女。外見年齢は14歳だが、実年齢は3歳。「フィア」とはドイツ語で「4」を意味する。マザーコアとしての機能に特化した魔法士として生み出された。ベルリンから神戸に輸送される途中、静江の依頼を受けた錬によってシティ・神戸より奪取される。神戸の事件解決後は弥生の元に引き取られ、錬と行動をともにしている。
七瀬 雪(ななせ ゆき)
元・最強の騎士。紅蓮の魔女の異名を持つ。祐一の婚約者で静江の娘。大戦終了直後に自らシティのマザーコアになる事を望み、死亡。「紅蓮」はもともと彼女の騎士剣であった。神戸の事件後、錬の花畑に彼女の墓が作られたものと思われる。
七瀬 静江(ななせ しずえ)
シティ・神戸の防衛局総司令官。娘を死なせてしまったことを嘆き悲しみ、マザーシステムに代わるシティ制御機構を開発しようとしていた。しかしその試みは難航し、シティ側は新たなマザーコアの作成に着手したため、この世の全てを憎むようになり、マザーコアを暴走させてシティ・神戸を壊滅させようとした。当初はマザーコアの暴走を制御する道具としてフィアを利用しようとしていたが、接するうちにフィアに愛情を注ぐようになり、最期はフィアに見守られて息を引き取る。
弥生(やよい)
錬がシティ神戸でお世話になっている女医。雪の日に娘を亡くしたという過去を持つ。神戸の事件の後は、フィアを引き取り、養女にしている。ちなみに金勘定については真昼や月夜よりもうるさいという一面も。
ヴィド
日本、東南アジア、東ユーラシアなどを渡り歩く隊商キャラバン「ヴィド商会」の頭。40代前後の白人の大男。気さくな人物で、天樹家の3人や弥生とは長年の付き合い。

「島」[編集]

雷 小龍(レイ シャオロン、愛称:シャオ)
龍使いの少年。ファンメイのことを気にしつつも、素直になれずにいた。2巻当時14歳。
戒 蒼元(カイ ソウゲン)
龍使い。体の調子が悪いみたいである。
飛 露蝶(フェイ ルーティ)
龍使い。お姉さん役。


シティロンドン[編集]

李 芳美(リ ファンメイ) … 『龍使い』
シティ・北京が残した実験施設「島」の中で暮らしていた龍使いの一人で、天真爛漫な少女。黒の水で創られる前の、「島」が打ち上げられる前、シティ・北京での実験の頃の、完全に生身の人間の時の自分の記憶があるため、外見年齢の14歳と言っていも間違いではないが、実年齢は7歳。同じ龍使いのシャオとはとある件から仲違いし口ゲンカが絶えない。島の崩壊後、ヘイズによってリチャードの所に連れて行かれ、シティ・ロンドンにおいて黒の水の暴走の治療を受けることになる。アルフレッド・ウィッテンのが制作に関わっている。
エドワード・ザイン(エド) … 『最強の人形使い』
エリザベート・ザインが創り出した最強の人形使い。エリザが「はい」「いいえ」「エリザ」の三つしか言葉を教えられなかったため、他者との会話を殆どしなかったが、錬・フィア・ファンメイと出会ってからは少しずつ会話するようになった。外見年齢は10歳、実年齢は6歳。世界に3機しかない雲上航行艦の一つ、シティ・ロンドン所属「ウィリアム・シェイクスピア」のマスター。エリザの残したデータを基に、世界樹を育て、青空を取り戻そうとするが、世界樹は欠陥品だったため、失敗に終わる。
リチャード・ペンウッド(先生)
エリザベート・ザインの弟子(ただし自称の可能性あり)。シティ「ロンドン」内ではかなりの力を持っている様子。情報制御理論と医学の双方に精通している。ヘイズの恩師で、彼に生きていくための知識と技術を与えた。ヘイズの「破砕の領域」「虚無の領域」を考案したのも彼である。

シティマサチューセッツ[編集]

クレアヴォイアンスNo.7(クレア) … 『千里眼』
千里眼とよばれる、圧倒的な情報収集能力を持つI-ブレインを持つ、ファクトリー所属の魔法士。外見年齢は17歳、実年齢は4歳。世界に3機しかない雲上航行艦の一つ「FA-307」のマスターでもある。弟のディーのことを常に心配していて、失敗続きのディーの弁護のためにマサチューセッツ上層部と頻繁に揉めていた。ディーがシティを離反した際は必死に引き止めるものの、ディーはセラを守ることを選んだため、ディーと死闘を演じることになる。しかし勝利したディーには姉である彼女を殺すことはどうしても出来なかった。「千里眼」はあらゆる情報を読みとることに長けているが、中でも通常の眼にあたる機能が優れているため、逆に目が機能しておらず、視力はない。人前ではアイマスクを着用している。
レノア・ヴァレル(マリア・E・クライン)
セラの母。光使い。雪と祐一の旧友。大戦中に軍から脱走する。後天性の魔法士の中でも光使いは特に寿命が短いとされ、自分の死後にセラに悲しい想いをさせたくないとの考えから、セラを突き放すような態度をとり続けていた。

シティメルボルン跡地[編集]

カール・アンダーソン(教授)
ウィッテンや真昼の教師。サクラの支援者。メルボルン自治区のリーダー。

シティモスクワ[編集]

イリュージョンNo.17(イル) … 『幻影』
マサチューセッツのファクトリー製の魔法士で攻撃系の魔法士ではない為武術を使う腕は一流、シティ・モスクワ軍に出向している身分。「賢人会議」を追ってメルボルンへ出向き、シティを守るためにサクラと全力で戦う。台詞はなぜか大阪弁で表記されている(言語のなまりを日本語で言うと大阪弁にあたるためと考えられる)。かつてはその生い立ちゆえに、シティと普通の人間を憎んでいたが、ある体験から考えが変わり、自分を犠牲にしてでもシティを守ろうとするようになる。自らを犠牲にしてきた為体にはありとあらゆる傷が残っている。その姿勢から軍、特に現場の兵士たちからの人望は厚い。基本的にヘイズと同じ熱血漢・人情家だが、多数を救うために少数を切り捨てられる非情さも兼ね備えている。量子力学を制御し、存在確立を改変できる。シティマサチューセッツ生まれでクレアヴォイアンスNo.7(クレア)の弟にあたる。クレアヴォイアンスNo.7(クレア)はイルのことが嫌いらしい。
イリーナ
シティ・モスクワの孤児院のシスター。彼女との出会いが、イルに大きな変化をもたらした。
天樹 月夜(あまぎ つきよ) … 『異能ならざる双子』
錬の姉。真昼と瓜二つの双子。天才エンジニア。錬が戦闘の際に使うサバイバルナイフの論理回路を作り上げたのも彼女である。怒るとすごく怖い。スパイ活動も得意な様子。真昼と共に錬を保護してからは弟として育てた。錬に対してはかなり甘い。またフィアに対しては、最初は辛辣な態度をとっていたものの、後に和解し、その後フィアが錬の彼女になってからは錬ともども可愛がっている。

シティニューデリー[編集]

アニル・ジュレ
シティ・ニューデリーの12人の執政官の一人。魔法士であり、タイプは「炎使い」。魔法士としての能力は平均程度ながら、指揮官として絶大な能力を持ち、大戦中は「将棋指し(チェス・プレイヤー)」の異名で恐れられた。かつてはマザーコア反対派だったものの、現在は賛成派に鞍替えし、マザーコア交換計画を成就させるために動いている。しかし、それは病気によって余命いくばくも無い自分の脳を次のマザーコアとして使用する為であった。
対騎士戦闘のほとんどを考案した炎使い。
ルジュナ・ジュレ
シティ・ニューデリーの12人の執政官の一人。アニルの妹。魔法士ではない普通の人間であるが、マザーコア反対派に属している。
サティ・ジュレ
アニルとルジュナの母親。大戦前の飛行艦艇の知識を持つ数少ない技術者。「Hunter Pigeon」の修理、メンテナンスを請け負っている工房の主。

賢人会議(Seer's Guild)[編集]

サクラ … 『もう一人の元型なる悪魔使い』
アルフレッド・ウィッテンが最後に遺した(と思われる)魔法士。そのI-ブレインは真昼の考案したシステムを基に作成されている。ウィッテンによってカールの下へ預けられ、シティ・メルボルン跡地で育った。ウィッテンに、自らの最高傑作と言わしめたほどの魔法士。「賢人会議」を名乗り、魔法士はシティに住む者の道具ではないと主張して、シティに戦いを挑む。性格はシリーズ初のツンデレ系だと思われる。矛盾と独善と偽善とひらきなおりに満ちあふれている反社会的行為を平然と行う姿勢には、数多くの支持と批判が同時に寄せられた。
天樹 真昼(あまぎ まひる) … 『異能ならざる双子』
錬の兄にして天才プログラマ。悪魔使いの基礎をほんの思いつき程度でほぼ完成させ、情報制御理論創始者の一人、アルフレッド・ウィッテンにして「本物の天才」と言わしめたほど。雪の死後、月夜と共にシティを離れ放浪していた際に錬を発見・保護し、以後弟として育てた。冷静沈着な人物で、錬や月夜のブレーキ役を務めている。錬の戦闘イメージを担当。
デュアルNo.33(ディー) … 『双剣』
シティ・マサチューセッツにある「ファクトリー」のエージェントで、I-ブレインを2つ持った規格外の騎士。外見は銀髪銀眼の西洋系の少年。外見年齢は14歳、実年齢は2歳。性格はとても臆病であり、例え犯罪者でも、他人を傷つけることが出来ず、任務は失敗続きだった。セラ・祐一と出会ったことで、強くなろうと決意するが、その決意が結果としてセラから母を奪ってしまうことになってしまった。その後捕らえられたセラを救うために、シティを離反し、姉のクレアと決別する。以降は罪の意識を抱えながらも、セラを守るために強くあろうとしている。
セレスティ・E・クライン(セラ) … 『光使い』
マサチューセッツのスラムに住む、金髪碧眼の少女。母レノアとの関係がうまく行っていない事を気に病んでいた。調査でスラムを訪れたディーと出会い、彼を気に入って協力する。実は世界で唯一確認された「自然発生した魔法士」で、学術的にはきわめて重要な存在とされる。マサチューセッツでの事件の際、ディーが自分の為に唯一の家族であったクレアをはじめとする全てを捨ててしまったことを気に病んでいる。 ちなみに、よく忘れられているが、メインのキャラクターの中ではエド(の外見年齢)と同じくらいなので、それ相応に扱われるが、自然発生の魔法士であるため、実は年長組(戦後に生まれた先天性魔法士の中では最年長)。

無所属[編集]

黒沢 祐一(くろさわ ゆういち) … 『黒衣の騎士』
過去の大戦で活躍した英雄。現・最強の騎士。婚約者・七瀬雪をマザーコアとされてから(下記)は、世界中を転々としていた。ベルリン軍にいた際、錬によるフィア奪取の現場に居合わせたことから、シティ・神戸へ帰還し、シティを守るために錬と対立する。神戸の事件後、再び世界を転々とするが、旧友のレノアからの手紙でマサチューセッツへ呼ばれ、そこで出会ったディーとセラを保護することになる。その後彼らが賢人会議のメンバーになることを決めた際に、「賢人会議の理想の下では自分は剣を振るえない」と言い、二人とは道を違えた。しかし彼らの危機には駆けつけることを約束している。なお神戸の事件以降、七瀬雪の騎士剣「紅蓮」を使用している。
ヴァーミリオン・CD・ヘイズ … 『異端なる空賊』
フリーの便利屋(現在は空賊家業を再会。通称『人喰い鳩』)。世界に3機しかない雲上航行艦の一つ「Hunter Pigeon」のマスター。外見年齢は22歳、実年齢は12歳。アルフレッド・ウィッテンによって生み出された先天的な魔法士の一人だが、I-ブレインのほとんどの部分が演算素子のみという欠陥品だったために「出来そこないの魔法士」という烙印を押された。他のシティに売り渡される際に空賊に奪われ、名前と家族を得た。空賊がシティに壊滅させられた後、逃亡中にリチャードと出会い、生きていくための術を教わった。情報の海への干渉は出来ないが、圧倒的な演算速度を持ち、情報解体攻撃「破砕の領域」「虚無の領域」そして「未来予測」を駆使して戦う。右目は義眼。相棒は雲上航行艦「Hunter Pigeon」のAI「ハリー」。
ハリー
雲上航行鑑「Hunter Pigeon」に搭載された管制システムの擬似人格プログラム。四角いディスプレイに横棒三本(二本が目、一本が口となる。これを動かすことで喜怒哀楽を表現する。)という姿だけで出現する。妙に表情豊かで、ヘイズとは以心伝心の仲 (?)。もとはシティで開発されたものだったが、あまりに個性的過ぎたことから破棄されそうになっていた所を、ヘイズを拾った空賊らによって奪われ、そのまま彼らの一員(?)となった。ヘイズの初めての友人であり、現仕事上のパートナー。

情報制御理論創始者[編集]

天樹 健三(あまぎ けんぞう)
情報制御理論創始者の一人。世界最高の物理学者。錬を作った人間であり、月夜と真昼の父。錬が生まれた日に肺炎で他界。
エリザベート・ザイン(エリザ)
情報制御理論創始者の一人。大脳物理学の権威。実践よりも美しい理論を書き上げる事にすべてを注いでいた。ウィルス性の内臓疾患で他界。なお、何故エドワード・ザインを作ったのかは未だ不明。アルフレッド・ウィッテンいわく「怪物」、天樹健三いわく「天才」。ちなみに彼女が使っていた情報制御理論の誕生以前のプラントには、情報制御理論によるかく乱が行われている部屋が存在する。
アルフレッド・ウィッテン
情報制御理論創始者の一人。数学者。史上最大の天才と呼ばれる。真昼の友人。サクラをカールに預けた後南極へ行ったきり消息不明(理由は「なくしたものを取りに行く」と言っていたらしい)。ちなみに作中の多くの登場人物に大きく関わっている(真昼、ヘイズ、ファンメイ、シャオロン、ルーティ、カイ、サクラなど)。

設定[編集]

情報制御理論[編集]

情報制御理論とは「世界には我々が一般に認識している現実世界の他に、『情報の海』と言う(恐らく離散的なデータからなる)側面を持っている。現実世界と情報の海は互いに干渉し影響し合っている。故に、ある一定以上の(非常に速い)演算速度を持つコンピュータを用いて情報を押し付け、情報の海を書き換える事で(現実世界とリンクした情報の海が書き換わったことにより)現実の世界も改変する事が出来る」と言うものである。改変する事が出来るのは、主に物理法則(物理定数)である。ただしアインシュタイン相対性理論で明らかにした「物体は光の速さ以上で移動できない」など、ごく基礎的、根幹的な部分については改変出来ない模様。

人類はこの技術により熱力学の第2法則「エントロピー増大の法則」を突破し、永久機関の創造に成功している。

本作品最大の特徴であり、これによって様々な特殊能力に説得力を持たせているが、この設定はよくも悪くも物理学を基幹としているため、理解が難しいとの意見がある。また2巻以降ではこの描写が簡略化されているため、「1巻目が山場、2巻目以降読みやすい」との意見がある。

I-ブレイン[編集]

I-ブレインは、Informational-Brainの略であり、魔法士の脳に埋め込まれた魔法を行使するための一連の人工器官の総称。『情報の海』を書き換えるコンピューター。

I-ブレインは「主記憶装置(メインメモリ)」、「CPU」、および「情報の海への接続部位」などの構成要素からなると想像されている。

性能
I-ブレインの性能は、製造および調整時に決定する。そのため演算速度が性能劣化により遅くなることはあっても、早くなることは無い。また持ちうる能力も製造および調整時に固定し、以後変化することは一切ない。これは極めて特殊な構造のI-ブレインを持つ「悪魔使い」であっても同様と思われる(悪魔使いは、騎士など他の魔法士の能力を模倣できるが、I-ブレインの構造自体は悪魔使いのものである)。また、きわめて正確な体内時計(おそらくコンピュータのクロックに相当するもの)が搭載されており、I-ブレインを持つものは、時計を持たずとも正確に時間を知ることが出来る。ただし時差についてどう扱っているかは不明。
取得方法
I-ブレインは後天的に取得するものと先天的に獲得するものがある。情報制御理論創設初期(大戦期)には、前者が一般的であった。これは主に軍人から志願者を募り、I-ブレイン(既に能力は設定されている)の埋め込み手術を受けるというものである。埋め込み手術の際には、I-ブレインに対する拒絶反応が起きないよう、被験者は遺伝子の改変手術も受ける。埋め込み手術は極めて成功率が低いらしく、多数の死者が出る模様。後天的にI-ブレインを取得した場合、情報処理が脳に与える負荷が大きく、先天的な魔法士に比べ能力は低くなりがちなうえ、脳の旧皮質が壊死する現象(フリーズ・アウトと呼ばれている)が起こる。戦後は先天性魔法士が一般的になったため、自然廃れてしまっている。
一方、先天的に獲得する場合は、遺伝子レベルから合成された魔法士、または自然発生(つまりは生殖行為の結果により生まれた子への遺伝)によって誕生する魔法士の2パターンがある。遺伝子レベルから合成された場合、その魔法士に生物学的な親は存在しない(培養槽で成長させられるため。遺伝子のモデルがいれば遺伝学的な親は存在しうる)。大戦後はこの手法での生成がほとんどである。能力は、遺伝子にI-ブレインの設計を組み込む際に設定する。ただしI-ブレインの成長は偶然に頼る部分も多く、擬似記憶によって人間として成長させて脳への刺激を与えないと、神経回路の生育に障害をきたし、I-ブレインが正常に機能しないことがある。
自然発生した魔法士はこれまでに一例しかなく、魔法士能力が遺伝する可能性は天文学的な確率。

魔法士[編集]

魔法士とは、脳内に「I-ブレイン」という生物学的に生成された生体量子コンピュータを保有し、上記の情報制御理論を用いて情報の海に干渉し「魔法」を行使出来る者を指す。正式名称はウィッテン・ザイン型情報制御能力者。常人をはるかに上回る身体能力を発揮したり、炎や氷の矢を投げつける、物質が生き物のように動き回り襲いかかるなど、多種多様である。主に「騎士」「人形使い」「炎使い」の3種に分かれ、生産もこの3種が多いが、これ以外にも「規格外」と呼ばれる特殊な能力を持った魔法士がいる。ちなみに、光使いや龍使い、それにまだ登場していない電磁場制御能力者は、希少ではではあるが、規格外ではなく、錬が複数回会ったことと、サクラが能力を持っていること、研究記録が残っていること、多数の人間が埋め込み手術を受けているから、本来は「規格外」ではなく、狙って創られたものであると思われる。

このように魔法士がいくつかのタイプに分かれるのには必然性がある。多数の能力を取得しようとしてもI-ブレインの容量が追いつかず、実力的に半端になってしまうからである(※錬やサクラは通常の魔法士の数倍以上のI-ブレインの容量によりこれらを可能にした(仮想的に動かすため第1級レベルに比べるとやはり劣る)、極めて特異な魔法士(しかし、あくまでも劣化コピーである))。

魔法士はその能力レベルからある程度ランク分けされているようだ。能力の高いものはA級(カテゴリーA)と呼ばれ、低いものはB級以下となる。基本的にB級魔法士がA級魔法士に勝利することは難しい。しかし、魔法士同士の戦闘は能力の優劣よりも、経験・戦略・ブラフ・相性が物を言う場合が多く、戦闘経験豊富な特A級魔法士の場合、A級魔法士数人を相手にすることも可能なようだ。ちなみにB級魔法士であっても、一般兵士数十人分に匹敵する戦力であり、一般兵から見れば十分に脅威である。

以下では各規格について紹介する。なお、物語は「規格外の魔法士」を中心に展開されている。

騎士[編集]

「自己領域」、「身体能力制御」、「情報解体」を使用することが出来る。自己領域はトップクラスの騎士でないと使用不可能な高度な技術である。自己領域と他の能力を同時起動する事はできない。また、能力を使用するためには騎士剣と呼ばれる剣状のデバイスが必要である。

対魔法士戦最強と言われている。弱点は、敵に直接攻撃する際に自己領域を展開したまま攻撃すると、敵が自己領域内に侵入し状況が著しく不利になってしまうこと。これを回避するために、敵に攻撃する際は一旦自己領域を解除して身体能力制御を起動しなければならない。この切り替え時にタイムラグが発生するため、それが僅かではあるが隙となってしまう。

一般的な魔法士の型の一つで、作中に多く登場する。七瀬雪、黒沢祐一などもこれにあたる。大戦時には1000人以上が生み出され、そのほとんどが戦死。特に有名なのはシティ神戸の『天樹機関』と呼ばれるところで、騎士剣などの基本が開発された。黒沢祐一、七瀬雪もここに所属していた(3巻にて黒沢祐一が一度名乗っている)。

  • 情報解体
物質を情報の側から破壊する。原則として単一分子で構成されている物質(石、金属など)は情報的にもろく、思考・演算する物質(生命体・コンピュータなど)は情報的に強固である。現実世界とは正反対の性質を持っている訳だ。ちなみに魔法士は情報の塊であり、解体はほぼ不可能な存在である。ただし1巻において、「天使」によって構成された巨大な魔法士(おそらくは、「騎士」)(にとても近しい存在)を、黒沢祐一は情報解体している。(おそらくは、巨大な姿を作り出すときに周辺のコンピュータを搭載している機械だけでは足らずに、周囲のただ単なる金属、建物の建築材料を使用していて、それを解体したものであると思われる)
  • 身体能力制御
運動能力と知覚速度を加速できる。最高レベルの騎士が最高レベルの騎士剣を使ったとしても、その倍率は100倍ほど。不自然な動作から発生する衝撃などを打ち消す演算も必要であり、運動能力を加速し過ぎると、反作用で体を壊してしまう。
  • 自己領域
光速度(光速度を越えることは不可能だが、光速度の値そのものは改変可能である)、重力定数プランク定数を改変し、自分の周囲の空間を「自分にとって都合のいい時間や重力が支配する空間」に改変する。亜光速(I-ブレインの能力・騎士剣の性能により差が生じる)で動ける為、他者からは「一瞬で移動した」ように見える。欠点は、相手が自己領域に入ると同等の恩恵を受ける為、近接攻撃の際に能力を解除しなければならない事。考案者は七瀬雪。初めてそのシステムが組み込まれた騎士剣は、彼女の愛剣であり、現在黒沢祐一が使用している「紅蓮」。なお、かなりの負荷を使用者に与えるため、外部からの情報攻撃を受けて強制終了する際(ヘイズの破砕の領域を受けたときなど)、起動と終了を繰り返すことを何度もできない。
双剣[編集]

騎士の一種で、「規格外」の魔法士。本来一人につき1つしかないI-ブレインを右脳と左脳に一つずつ持っているため、自己領域と身体能力制御の同時起動を行うことが出来る。そのため、騎士の弱点である「自己領域から身体能力制御への切り替えのタイムラグ」がない。ただし、並列処理中は身体能力制御の加速率が若干低下する。

デュアルNo.33(ディー)がこれにあたる。

  • 万象之剣

かつての黒沢祐一の騎士剣、狂神二式改「森羅」についた機能。殲滅曲線(正式名称は最適運動曲線)、つまり「最も効率良く殲滅を行うことが出来る曲線」を描き現実に強制的に当てはめて戦う。「森羅」の抑制機構を全て解除した時のみ発動可能。代償は多大なI-ブレインの負担。 なお、このとき「森羅」の機能によって仮想骨格を作り出され、敵に斬られても血液なども仮想の血管によって流れるので出血は防がれ、I-ブレインの活動停止まで戦闘を続けることが出来る。なお、敵を殲滅する為だけの機能なので回避、防御は一切考慮されておらず、最適な軌道をとるために自ら敵の攻撃に直進し続ける。前述の機能があるのでI-ブレインが起動している限り死亡することはないが、戦闘中凄まじい激痛に耐え続けなければならない。

デュアルNo.33(ディー)のもつ双剣の片方「陰」の結晶部分が一部欠損した際、「森羅」の結晶によって天樹月夜が補ったため、この機能が使用可能となっている。

人形使い[編集]

能力を「ゴーストハック」に特化し、もっとも多く生産された魔法士。大戦中には、騎士の標的となり、ほとんどが戦死した。一般の部隊に対して結構な戦果をあげた。

一般的な魔法士の型の一つで、作中に多く登場する。エドワード・ザインもこれにあたる。

  • ゴーストハック
無生物に情報の側から侵入し生物化して戦わせる。コンクリートを軟化させクッションのように変える事も出来る。ただし、生物化できる時間は短く、命令を出し続けなければ直ぐに崩壊してしまうため、兵器の制御コンピュータを乗っ取る事で生物化を持続させる。通常はイメージしやすいという事で腕などの生物的な形状を取るが、高レベルの能力者ならばネジなどの無機質な形状でも操れる。
  • メルクリウス
シティロンドンが開発した人形使いが最も使いやすい金属。エドワード・ザインが乗る雲上航行艦「ウィリアム・シェイクスピア」の外装部分に使われている。

炎使い[編集]

分子運動制御が使える。空気中の窒素から熱を奪い凝固させ、相手の攻撃を防ぐ、または槍状に変化させ攻撃する。その際奪った熱量を空気中に戻し、爆発を起こすことも可能。高レベルの炎使いであれば、一定空間をまるごと凍結させたり、真空を生み出すなどの大規模な攻撃が可能になる。

一般的な魔法士の型の一つで、作中に多く登場する。VI巻の主要キャラ、アニル・ジュレはこのタイプの魔法士。

  • 分子運動制御
分子を操作し温度を改変する。熱量を奪い去って氷を創ったり、逆に熱量を与えて炎を創ったりすることが出来る。ただし、エネルギー保存の法則は無視出来ないので、仮に熱量を奪い去ったらその熱量はどこかで消費しなければならない。

天使[編集]

同調能力と呼ばれる特殊な能力が使えるI-ブレインを持つ。世界中の魔法士の中でも特出したI-ブレインの容量を持ち、一般人はもちろん、例え魔法士が相手あっても行動の一切を支配下に置ける。その代わりに、痛覚なども全て受け取ってしまう為に、支配した相手を攻撃する事は出来ない。マザーコア特化型であり、作られた理由もマザーコアの交換のためである。

フィアがこれにあたる。

  • 同調能力
I-ブレイン内の巨大なメモリ内に対象の情報すべてを取り込み、情報の側から支配する。ただし、痛覚もフィードバックされるので攻撃には使えず、あくまでも足止め用である。医療などにも応用が利く。

龍使い[編集]

黒の水と呼ばれるデバイスを利用して、身体構造制御を行う。「物理面」「情報面」ともに鉄壁の防御力を持つ。広範囲での戦闘には向かないが、対個人、特に対騎士戦では圧倒的な戦力を誇る。黒の水が本体を侵食する事により暴走する欠陥を解決できなかったため、大戦への投入は見送られた。

李芳美(リファンメイ)、雷小龍(レイシャオロン)、戒蒼元(カイソウゲン)、飛露蝶(フェイルーティ)がこれにあたる。生き残っているのは李芳美(リファンメイ)ただ一人。

  • 身体構造制御
黒の水というデバイスを自らの身体に取り込んで強化・変質させる。情報制御の中枢を成す脳を破壊されない限り瞬時に再生させる事が出来、対騎士(対情報解体)用として開発された。しかし、黒の水には、いずれ本体を取り込み暴走するという致命的な欠陥(バグ)があった。

光使い[編集]

シティ・ロサンゼルスで開発された時空制御特化型魔法士。遠距離戦闘のスペシャリスト。D3(Dimension Distorting Device)とよばれる透明な十二個の正八面型結晶体のデバイスを使用して、空間歪曲や擬似的な荷電粒子砲を使うことが出来る。重力を操って飛行も可能。単体戦では対魔法士戦でも最強とされる騎士とは対照的に、大量虐殺に秀でた光使いは大戦時、「戦場の死神」として最も恐れられた。(ちなみにⅢ巻の一章でしっかりと「戦場の死神」となっているにもかかわらず、二次作品では、よく「死神」が「鬼神」と誤植されている)

セレスティ・E・クライン(セラ)、レノア・ヴァレル(マリア・E・クライン)がこれにあたる。生き残っているセラは自然発生したI-ブレインをもつ稀少な魔法士。(他に2人いることになっているが、彼らは大戦中に死亡)

  • 時空制御
空間を歪曲する事で攻撃を回避する「Shield」と、局所的に閉鎖した空間で光や原子、分子を加速して荷電粒子砲のように撃ちだす「Lance」がその代表例である。なお、「Lance」は光の速さで迫ってくる為、いかなる魔法士であっても認識してからの回避は間に合わない(射出を予測出来た場合は別)。ちなみに、D3自体も空間の隙間に出し入れすることが可能である。

千里眼[編集]

「規格外」の魔法士。情報の海へ影響を及ぼす魔法を使用出来ない代わりに、可視域の電磁波を始めとしてあらゆる情報を極めて広範囲かつ正確に捉える知覚能力を持つ。文字通り千里を見渡すことが出来、この魔法士の知覚から逃げ切る事は不可能である。

クレアヴォイアンスNo.7(クレア)がこれにあたる。

幻影[編集]

量子力学的制御を行うことで絶対的な防御と防御不可の攻撃を行うことが出来る。ただし、攻撃能力は一般人と変わらない。また、存在自体を感知する能力も持つ。

イリュージョンNo.17(イル)がこれにあたる。

物質の存在確率を制御する事が出来る。通常物質の存在確率は100%に近いが、これを0%に近くする事であらゆる攻撃を回避し、すべての防御を突破出来る。また物質の座標期待値改変による近距離転移(テレポーテーション)も行える。この能力は現在描かれている能力の中で、最も難解な能力の一つであるが、作中では原理よりも、この力が使用されたことによる結果に重点を置いているため難解さを軽減している。電磁場などの存在確立も制御できるため、ノイズメーカーもあまり意味をなさない。理解しようと思うと量子力学の世界観を解する必要がある。
存在確率
仮に人体が100個の細胞で出来ていて、その存在確率が1%だとする。その時に1回攻撃を受けたとすると、100個のうち1の細胞にだけ攻撃が当たる計算になり、残りの99個の細胞は全くの無傷で済む。ちなみに100個の細胞全てに攻撃が当たる確率は、100の100乗分の1である。

悪魔使い[編集]

すべての魔法士の雛形にして完成形。悪魔使いとは天樹月夜・真昼のつけた呼称で、アルフレッド・ウィッテンは元型(アーキタイプ)と呼んだ。本来書き換え不可能な基礎領域を書き換える事で、あらゆる能力を使用することが出来る。つまり他人の能力をコピーして使えるという事(作中ではこの能力を『自己進化能力』と呼んでいる)。ただし、能力の質はオリジナルには及ばず、またコピー出来ないこともある(おそらく大量の記憶領域を必要とする天使、自らの身体構造を改変する龍使いなどの能力がこれに当たると思われる)。 基礎領域を書き換えると言う点において、FPGAのような構造だと思われる。 錬とサクラがこれにあたる(もともとサクラのために創ったものであるため、製作者が違う錬が使用できることは、不思議らしい(真昼談))。

ハードウェアの製作者は錬が天樹健三、サクラがアルフレッド・ウィッテン。ソフトウェアの全体的な設計者は天樹真昼。錬のソフトウェアは天樹真昼が作り、サクラのソフトウェアはウィッテンが(真昼のノートを元に)作った。

以下は、真昼が考えた、元型(アーキタイプ)のシステムの根幹

  • 操作
基礎領域は書き換えが不可能なため、制御もできない。この基礎領域を直に制御する。
  • 並列
異なる能力を同時に使用する。
  • 合成
異なる2つ以上の能力を合成して一つの能力として扱う。
  • 創生
蓄積データを元に新たなる能力を創りだす。

真昼曰く、「どんなI-ブレインを持ってしてもこの4つをすべて組み込む事が出来ない」。

原因については作中ではまだ触れられていない。

天樹錬が有する能力

錬のシステムの根幹は並列、限定的な操作、そして創生である。錬が現在保有する能力は以下の通りである。

ニュートン力学に基づく3秒先の未来を予測、可能性の高い順に表示。
騎士の身体能力制御のコピー。錬がこれを使うとき、知覚速度は20倍、運動速度は5倍に定義する。これが錬自身の体を壊さずに加速できる最高値。ただし、どうしても必要な時は片腕のみの運動速度を15倍に定義している。
人形使いの仮想精神対制御のコピー。
炎使いの分子運動制御のコピー。大気の熱量を奪い氷の結晶を生み出す「氷槍」「氷盾」、熱量を一点に集中する「炎神」が確認されている。氷槍の上位魔法として、対象の360度全方位に槍を生み出す「氷槍檻」が存在する。
光使いの時空制御のコピー。「Lance」は使用できないが、重力方向の改変による飛行等は可能。時空をゆがめ、無限の深さを持つ空間の穴「次元回廊」を生成できる。
騎士の自己領域のコピー。起動には騎士剣が必要。数分のみなら月夜作のナイフでも発動可能(1度きりで、使用後は壊れる)。ただし、得られる速度は光速の70%が限界。主に対騎士、対自己領域用 。
ヘイズの破砕の領域のコピー。ただし、錬のI-ブレインは破砕の領域の起動に必要な演算速度を持っていないので、必ずマクスウェルとの併用によって空気分子の数を制限しなければならない。論理回路の大きさは約20cm。虚無の領域は使用不可。

デーモンという呼び方は、UNIXでメモリに常駐するソフトウェアをそう呼ぶことと、ラプラスの悪魔マクスウェルの悪魔という古典物理学に提起された二つの問題の名前をかけていると思われる(ただし前者のスペルはdeamon、後者はdemon)。作中で錬は上記の各デーモンをI-ブレインに常駐させて使用しており、またその能力もそれぞれの問題の内容をそのものである。これらの古典物理学で提起され現代の量子論などにより否定された問題が、情報制御理論によって可能となっている。作中にエントロピー第2法則が破られたという説明があり、これはマクスウェルの悪魔によって提起された問題が現実となったことであろう。 その他のデーモンの名前も、物理学者や数学者から取ってきている。

サクラが有する能力

サクラのシステムの根幹は、操作、合成、そして創生である。錬と違い複数の能力を同時起動出来ないので一見弱く感じるが、能力を「操作予約」し、タイムラグ無しで次々と放てる(おそらく完全な操作能力を有す為と思われる)ため、戦略さえ練れば引けは取らない(発動時は、連弾と表記されている)。「合成」能力によって全く新しい能力を生み出せる為、悪魔使いの戦闘で最も重要な「選択肢の広さ」では錬を凌駕する可能性を秘めている(なお、論理回路生成デーモンが使用できるかどうかは不明)。

  • 運動係数制御
錬のラグランジュに相当する。知覚速度・運動速度共に5倍に定義できる。
  • 仮想精神体制御
錬のチューリングに相当する。自身のマントを変化させる技は「翼」と呼んでいる(そのほかは生物化)。
  • 分子運動制御
錬のマクスウェルに相当する。体の周りに大気の壁を展開して自由落下の速度を和らげたりする技は「羽根」、大気の壁で音を遮断する技は「沈黙」、空気結晶の鎖によって相手を捕らえる技は「鎖」、空気結晶の銃弾を飛ばす技は「弾丸」と呼んでいる。
  • 電磁気学制御
目の前の空間の電磁場を制御する。(基本的に電磁場加速を行っている)ミスリル製の特殊なナイフと組み合わせて、いわゆるレールガンとして使うことで「銃身」「魔弾の射手」「天の投網」が使用可能(天の投網発動には、「檻」という能力の発動が必要)。
  • 量子力学制御
幻影のコピー。ただし30%しか変化させることが出来ず、防御には使えないので基本的に対幻影用。「神の賽子(さいころ)」と呼んでいる。

合成された能力

  • 踊る人形
仮想精神体制御に運動係数制御を付加したもの。仮想精神体(ゴースト)に最高クラスの騎士並の運動速度を与える。この運動速度を得るために「不自然な動作から発生する衝撃などを打ち消す」演算を行っていないため、仮想精神体は短時間で自壊する。
  • 幻楼の剣
仮想精神体制御に量子力学を付加したもの。「翼」の存在確率を70%にして、残り30%を防御を通過する刃として攻撃する。70%は崩壊してしまうため、おそらく1回の戦闘で使えるのは、1回のみ(もし、それ以上使えば、使ったほどだけ、外套が小さくなり、威力が劣化すると思われる)。

????[編集]

一巻に「とある魔法士の同調能力によってアフリカ大陸全部のシティの核融合炉が暴走した」とある。能力的には「天使」に近い物があると推測されるが、詳細は不明。

空賊[編集]

正確には魔法士の種別ではなく、ヴァーミリオン・CD・ヘイズの職業。大戦中には数多くの空賊がデータや魔法士などの奪取を目的として航空船を襲っていたが、現在はヘイズが世界唯一の空賊となっており、その別称とされる。

  • 未来予測
超高速演算によって短期的な未来を予測出来る。「できそこないの魔法士」であるヘイズが他の魔法士と互角以上に戦える最大の理由。もちろん、いくら予測が完璧であっても、速度や体勢などの原因で回避不能な攻撃に関してはどうしようもない。欠点は、相手の攻撃を見ないと対応できないため、フィアのような能力に対してはとてつもなく弱い。敵が二人になると、負担も2倍になる。
  • 破砕の領域(Erase circle)
空気分子の動きを正確に予測し、そこに音を鳴らすことで論理回路を形成する。この論理回路は騎士の情報解体と同じ力を有し、なおかつ騎士のものより解体する力は強い(錬の腕を一瞬崩壊させかけたほど)。起動するにはI-ブレインの機能のほぼ全てを超高速の演算装置として使用しなければならない(錬の3000倍(フィアの600倍)の演算速度が必要)為、ヘイズにしか使えない。論理回路の大きさは約50cm。また、厳密にいえば魔法ではないため、ノイズメイカーの影響下でも使用が可能。
  • 虚無の領域(Void sphere)
破砕の領域の発展型。形成した論理回路が、新しくひとまわり大きな論理回路を形成し、その形成された論理回路がさらに大きな……という具合に、指数関数的に論理回路を巨大化。最終的に、自らの大きさに耐えられなくなった論理回路が周囲の物質を巻き込んで自壊。結果、ありとあらゆる物質を確実に解体する。論理回路の大きさは調節可能であり、最大(Hunter Pigeonの演算つき)で直径約10km。現在、シリーズ内で最も高い破壊能力を有する。欠点は、1度起動するとI-ブレインが過負荷でオーバーフローし、3時間以上の休止時間が必要な点。その間は一切I-ブレインを用いる能力が使えなくなる為、まさに切り札と言える。

その他の用語[編集]

シティ
情報制御理論を活用することによって維持されるドーム型の積層都市。完全な自給自足が可能だが、システムの根幹である「マザーコア」の耐用の期限が迫っており、各シティはマザーコアの維持に全力を注いでいる。
世界樹(せかいじゅ)
エリザベート・ザインが偶然発明した、情報解析能力を持つ代物。マザーコアの代替品にすることが出来るため、これの種を巡って争いが起きる。なお、語源の世界樹(ユグドラシル)とは北欧神話に登場する世界を支える大木。詳細はユグドラシルを参照。
雲上航行艦(うんじょうこうこうかん)
気象制御衛星が掃き出した太陽光を遮断する雲を抜け、空を駆けめぐることが出来る艦船。特殊な機能と非常に優れた魔法士を必要とするため、世界で3機しかない。
  1. 一五〇メートル級高速機動艦「Hunter Pigeon」。マスターは、ヘイズ。主動力はWZ-0型演算機関。巡航速度は時速一万七〇〇〇キロ、最高速度は約5万キロ。雲の中での機動力は三隻の中で一番下。戦前にあるシティが開発した、演算期間式の飛行艦艇の試作機。武装は荷電粒子砲一門、船体の両側面に埋め込まれたスピーカー。
  2. 七十五メートル級高高度索敵艦「FA-307」。マスターは、クレア。主動力はX7型演算機関。巡航速度は時速一万四〇〇〇キロ、最高速度は一万九〇〇〇キロ弱。雲の中での機動力は三隻の中で最速。シティ「マサチューセッツ」が二一九六年に開発した、雲上での航行、および広範囲の監視・索敵を目的とする飛行艦艇。武装は荷電粒子砲一門、近接戦闘用ワイヤー多数。
  3. 二〇〇メートル級特務交錯艦「ウィリアム・シェイクスピア」。マスターは、エド。巡航速度は時速八〇〇〇キロ弱、最高速度は一万四〇〇〇キロ。雲の中での機動力はFA-307に少し劣る。シティ「ロンドン」が開発した、人形使いの搭乗を前提として設計された飛行艦艇の試作機。武装は流体金属メルクリウス。
賢人会議「Seer's Guild」(けんじんかいぎ)
以前はサクラ個人の偽名であったが、現在はサクラをリーダーとし、世界最高クラスの魔法士のディーとセラ、そしてI-ブレインを持たない真昼を加えた四人を中心とするテロリスト。シティにより第1級犯罪者に指定されている。本拠地はシティ・メルボン跡地からアフリカ海に移っている。また、賢人会議に助けられた魔法士の半分はシティの影響力の薄い南米で暮らしている。
電撃ゲーム小説大賞銀賞
第6回
ウィザーズ・ブレイン
第8回