海洋汚染

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海洋汚染(かいようおせん)とは、海域海水が人間の活動によって排出された物質(廃棄物)で汚染されることをいう。このような廃棄物には、有毒な元素化学物質だけでなく、一般家庭から排出される油脂とぎ汁などのすべての有機物ペットボトルビニール袋などの腐食しにくいゴミ、近代の農業に不可欠な化学肥料[1] など多種多様なものがある。

大規模な環境破壊に通じる例として、戦争による石油関連施設の破壊、悪天候や人為的ミスによるタンカー座礁による原油流出事故[2] がある 。しかし、これらは短期的であるため生物には結局少ない損害しか与えないのに対し、一見すると無害に思えるが汚染が長期的である有機物と栄養塩は、特定の水生生物の絶滅という決定的な破壊をゆっくりと着実に引き起こしており、しかも人口増加に比例して汚染量が増え続けるという厄介な問題を抱えている [3]。現在では、ほとんど全ての国際主要河川の河口部で、富栄養化による赤潮青潮が頻繁に起こっており、漁業に大きな被害が出ている。また、汚染によるヘドロの堆積と藻場の減少という問題は、海洋生物の産卵場所の減少を意味し、海洋生態系に深刻な影響を及ぼしている。

全地球的な海洋汚染となっているもののひとつに、環境中に放出された特定の有害物質(有機水銀PCB、殺虫剤BHC などが有名である)がある。これらは、水に溶けて海へ流出した時点では低濃度であっても、プランクトンなどの海洋生物の体内取り込まれると食物連鎖によって次々と生物濃縮が起こり、連鎖の頂点にいるマグロなどには高濃度に蓄積する。このような生物を多量に食べると健康被害や知能の低下を引き起こすと言われている。

海洋汚染のひとつに土砂の流入もある。人間が山の木を大量伐採したあとに大雨が降ると、自然状態とは数桁違う大量の土砂が河川に流れ込むため、産卵場所としての藻場や、珊瑚礁のような微妙な生態系に大きな影響を与えることになる。沖縄に大雨が降って海に土砂が流れ込むと、珊瑚礁にオニヒトデが異常発生することが知られている。

さらに近年、漂着ごみによる海岸への悪影響が深刻な問題となりつつあり、また、ウミガメや大型魚類がビニール袋をクラゲなどのエサと勘違いして食べ、消化管が詰まって死に至るという問題も起こっている。

また、近年では上記のような汚染だけではなく、漁獲資源の乱獲による海洋生態系の崩壊も問題になっており、これもまた広義の海洋汚染として認識されつつある。 1960年代からの大規模なトロール業の開始と、魚群探知機などに代表される行き過ぎた漁業技術の進歩により、現在では多くの大型魚類資源がかつての量の10%以下となっており、絶滅も心配されている。この結果、主要な小型魚種の不安定的な資源量変動が生じ、海洋生態系を構成する生態系ピラミッドの改変(クラゲヒトデなどの大発生に代表される、いわゆる「海のスライム化」)の要因のひとつと考えられている[4]

排水の規制により、河川水質は一定改善されたが、閉鎖性水域水質が改善されない原因として、底質汚染の問題があり、底質汚染が水質汚染の原因と一つとなっている。このため、国土交通省は技術的資料や、考え方などを2007年にとりまとめ対応している。

脚注[編集]

  1. 有機肥料による有機農業が叫ばれて久しいが、現実的な問題として、これほどまで増加した人口を化学肥料抜きに支えることは難しく、今後も人口の増加に見合った化学肥料消費と耕地面積の増加が予想されている。人口はこの50年間でほぼ2倍に増加し、耕地面積も人口にほぼ比例して増えてきたが、このために生息地を失った動植物が急速に減少または絶滅しており、今後も動植物の絶滅は加速度的に増加すると考えられている。
  2. 船舶の事故による海洋汚染に対し、領海に入った船舶に国際基準の安全基準を満たしているかを寄港国が立入検査するポートステートコントロール(PSC)の権限が認められている。
  3. 先進国では排出される有機物が浄化槽下水処理場などで浄化され、栄養塩と有機物の一部が排出されるため完全とは言えないまでも一定の効果を上げているが、開発途上国ではこれらの対応が遅れていることが多く、急激な人口増加による深刻な汚染があちこちで起こっている。
  4. 耕作地からライン川に流れ出した大量の化学肥料が黒海へ流れ出し、一帯が長期的な低酸素状態になったことがあった。このとき、ほとんどの魚は死滅したが、低酸素に強いクラゲやヒトデは生き残っていた。これは、栄養塩や有機物が海のスライム化の要因になることを示す例である。

関連項目[編集]

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