ピアス

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ナベル

ピアス (pierce) は、身体の一部に穴を貫通させ、その穴に通して付ける装身具の総称である。本来は、「穴を貫通させる」という意味の動詞であり、ピアシング (piercing) は「穴を貫通させること」、また場合によってはその穴にピアスを通すことを意味する。体への穴であることを明確に示すときは、ボディ・ピアス (body pierce)、ボディ・ピアシング (body pearcing) という。ただし、これらは通常、行為をさし、ピアス(穴に通す装身具そのもの)を簡潔に総称する英語の表現はない。

耳たぶなど外耳に穴を開けてとりつける耳飾りのイヤリング (pierced earrings) が代表的。

歴史[編集]

有史以来、古くはタトゥーと同様、邪悪なものから身を守る魔除けを目的として用いられていたが、現在まで時代を経るに従いファッション性の意味合いが強くなっている。

耳のピアス[編集]

耳へのピアスは、インド、エジプトなどの古代文明に、人類が装飾品で身体を飾る際に耳への装飾も行ったことに始まる。当時の金工技術は高度で、輪状の金属製の耳飾りが一般的であった。この耳飾りは耳に開けた穴に取り付けられ、ピアスの原型となった。 また古代ローマにおいては男性の乳首へのピアスは、マントやケープを身体に留めるための、実用的かつ一般的な装飾であった。

ボディピアス[編集]

ピアスは耳たぶだけではなく、へそ乳首性器などに付けることもある。このようなピアスは、20世紀末ごろからファッションとして行う者が多くなりみられるようになった。これら耳以外へのピアスを、一般的にボディピアスと呼び、また装身具のピアスを着装するために、身体に穴を開けることをボディピアッシングという。厳密にはピアッシングやピアスは、貫通を意味する言葉であり、人体への装飾ピアスはすべて、ボディピアスと呼称されるのが適切である。

概要[編集]

日本において、ピアスを通す穴(ピアスホール)を身体に開けるのは医療行為と見なされるため、医師[1]による施術を頼る人がほとんどである。しかし、医療行為を本業とする医師はピアスに関する専門的な知識やデザイン上のノウハウを十分に持ち合わせていない場合が多い。そのような医療機関の多くは、素人が自分で開けるのと何ら変わりないピアスガン(もしくはピアッサー)を使用している。

海外では、ピアスの専門知識を習得し、国によっては政府公認の協会からプロフェッショナルとして認定されたピアッサー(ピアスを開けることを職業としている人)に施術を依頼する場合が多い。彼らはピアッシングスタジオと呼ばれる場所で活動し、技術、衛生面とも最新の方法で安全にピアスホールを開けている。アメリカでは、ウォルマートなどのスーパーマーケットで開けてもらう人も多い。

日本では、ピアッシングスタジオやボディピアス専門ショップはまだまだ珍しい場所であるものの、ピアス知識の無い医師に頼るよりは安心と言えることも少なくない。ただし、アクセサリーショップやネイルサロン美容室、タトゥショップなどの片隅などで、文字通りただの穴開けのみを請け負う、悪質なピアッシングスタジオもある為、見極めには十分に注意しなければならない。なおタトゥ・刺青とピアッシング技術はまったくの別物であり、片方の技術を身につけたものがもう一方を行う能力を持っているわけではない。

ピアススタジオはたとえどんなに良質な施術であっても不当医療行為であり、医師法に抵触する。2006年10月には不適切な対応を受けた顧客の訴えにより、渋谷区のピアススタジオ経営者が医師法違反などの疑いで逮捕されている。しかし大半の場合はタトゥスタジオ・刺青師と同様、黙認されているのが実情である。

タトゥとは違い、18歳未満の子供がピアスを着ける事は法律上禁止されてはいない。しかしほとんどの学校では校則で禁止されており、頭髪・服装検査の一環としてピアスホールをチェックする学校もある。 近年では自分の子供(幼児)にピアスを身に付けさせる保護者[2]が存在し、児童虐待と見る向きもある。

医療施設でのピアシングは健康保険が適用されない為、個人の自費診療として行われる。

ピアスは原則として女性が行う傾向があるが男性もプロ市民などを中心としてピアスを行っている者もいる。具体的には、2004年にイラクに渡航して有名になった者(彼はキリスト教の家庭に生まれたため十字架タトゥーもしていた)、2014年7月にイスラエル大使館前で行われたデモに参加していたタトゥーもしているピースボートの活動家、2014年夏季に日本テレビ付近で行われたデモに参加していたモヒカン刈りの男性などが両耳にピアスをしている。

ニードルとピアスガンの違い[編集]

ピアスホールを開ける手段として、ピアスガンもしくはピアッサー(穴を開ける為の簡易器具、多くは耳たぶ用)を使用する場合が非常に多い。ピアス愛好者達が好んで使用する道具はニードルである。見た目は注射針そのものであるが、実際は注射針よりも太く作られている。またピアッシング専用の特殊ニードルもある。

ピアスガンとニードルの決定的な違いはその鋭さにある。ニードルは医療用ステンレス鋼で作られた刃物であり、良く切れる為に余分な皮膚組織を壊さず、スマートにホールを作ることが出来る。それに対し、市販のピアッサーやピアスガンは先が鋭利でないため、皮膚組織を大きく傷つけ、内部にも大きなダメージを残す結果となりうる。

トラブルと感染症[編集]

ピアスホールを開けるということは身体にを作ることに他ならない。よって開ける時には万全の注意を払うことが何よりもまず大切といえる。

ピアッサーが使用しているニードルは通常使用に関しては一本一回限りの使い捨てである。 ピアスガンに関しても減菌処理されているものが有る。これも基本的に一回限りの使い捨てである。しかし、幾ら使用器具を清潔にしていても、使いまわしなど使用自体に問題があったり、開けた後のホールを指で不必要に弄るなどすると、トラブルや、B型肝炎HIVといった重大な感染症を招く恐れがある。

そういった感染症対策の為に一部の業界(農林水産業・医療・食料品を扱う業界などの一部)では職員のピアスが禁止される場合もある。また、つけているピアスの材質が元でのトラブルが起こる時もある。大抵は粗悪な金属素材によるものだが、金属アレルギーなど体質的な原因や、アクリル樹脂など傷が付きやすくそこから雑菌が繁殖しやすい材質のものでもトラブルが起こる可能性がある。

こういったトラブルを未然に防ぐには、人体用ステンレス鋼であるSUS316LVMや純粋なチタン、またはテフロン樹脂やシリコーン樹脂などの生体適合性に優れた材質のピアスを使うことが大切である。また単に「チタン」と表示されているものは表面だけのものが多いので要注意である。

血液の病気など疾患を持つ者や、病気療養中の者、出血しやすくが止まりにくい体質の者はピアッシングをすることに適さない為、それを行ってはならないとされる。ピアスを通した後も患部が赤く腫れたり痛みがある場合は速やかにピアッサー又は医師の診断を受けることが望ましい。

名称[編集]

  • アイブロー - にするピアス。
  • アウターコンク - 耳の軟骨部のピアッシング。
  • アンチ・アイブロウ - 目の下の頬辺りに行うピアッシング。
  • アームピット - 脇の下のピアッシング。
  • トラガス - 耳珠(顔側の耳孔の前にある三角に出っ張った軟骨)へのピアッシング。
  • ヴァーティカル・トラガス - 耳珠を縦に貫くピアッシング。
  • ヴァンパイア - 吸血鬼に噛まれた様に見せる首周辺へのピアッシング。
  • アンチトラガス - 耳たぶの上側の軟骨にするピアッシング。
  • イヤーロブ - 耳たぶのピアッシング。
  • インダストリアル - 耳の軟骨部などで2箇所の穴を1つのバーベルで通すピアッシング。
  • コンク - 耳の穴付近の軟骨にするピアッシング。
  • サーフェイス・トゥ・サーフェイス - 皮膚表面へのピアッシング。
  • スクランパー - 上唇の内側で歯茎と結ばれている筋にするピアッシング。
  • スナッグ - 耳の軟骨部にするピアッシング。
  • スパイナル - へのピアッシング。
  • セプタム - 鼻中隔へのピアッシング。
  • センタータン - 舌の真ん中にするピアッシング。
  • ダイス - 耳の軟骨ピアッシング。
  • タン - 舌のピアッシング。
  • タンウェブ - 舌の裏側にある筋にする口内ピアッシング。
  • タン・リム - 舌の端にするピアス。
  • チーク - にするピアッシング。
  • ナサラング - 鼻の根元を左右に貫通するピアッシング。
  • ナックル - こぶしの指の間にするピアッシング。
  • ナベル - へそのピアッシング。
  • ニップル(乳首ピアス) - 乳首を貫通するピアッシング。
  • ヴァーティカル・ニップル - 乳首を縦にあけるピアッシング。
  • ハンドウェブ - 手の指の間にするピアッシング。
  • ビンディ - 眉間の上部(額)を縦に貫通するピアッシング。
  • ブリッジ - 目と目の間に行うピアッシング。
  • マディソン - 喉元の下部にするピアッシング。
  • マドンナ - 唇まわりにつけぼくろのようなピアッシング。
  • ラブレット - 口の周辺にするピアッシング。
  • リップ - 唇周りへのピアッシング。
  • リンガム - 舌の裏側をえぐるように貫通するピアッシング。

マンコ[編集]

  • アウターラビア - 大陰唇のピアッシング。
  • イザベラ - クリトリス包皮の上からクリトリス下側を縦に通るピアッシング。
  • インナーラビア - 小陰唇のピアッシング。
  • ヴァーティカル・クリトリス - クリトリスを縦に貫通するピアッシング。
  • ヴァーティカル・クリトリス・フッド - クリトリス包皮を縦にあけるピアッシング。
  • ギーシュ - 会陰のピアッシング。
  • クリスティナ - 恥丘にするピアッシング。
  • クリトリス - クリトリスのピアッシング。
  • クリトリス・フッド - クリトリス包皮を横に突き抜けるピアッシング。
  • トライアングル - クリトリス包皮からクリトリス下を貫通するピアッシング。
  • バーティカル・クリトリスフッド - クリトリス包皮を縦に貫通するピアッシング。
  • フォルシェ - 会陰部に膣内から入れるピアッシング。
  • プリンセス アルバティナ - 尿道から膣口へと抜けるピアッシング。
  • ヒューメン - 膣口のピアッシング。

男性性器[編集]

  • アパドラビア - 亀頭を縦に貫通するピアッシング。
  • アンパラング - 亀頭を横に貫通するピアッシング。
  • ドルフィン - ペニスの裏筋から尿道を通り裏筋に出すピアッシング。
  • ダイドー - 亀頭カリのピアッシング。
  • ハファダ - 睾丸の包皮にするピアッシング。
  • ピュビック - ペニス付け根のピアッシング。
  • フォアスキン - 亀頭包皮のピアッシング。
  • プリンス・アルバート - 尿道口から亀頭下部付け根へ抜ける。
  • フレナム - ペニスの裏筋に入れるピアッシング。
  • メイル・ニップル - 男性乳首のピアッシング。
  • リバース・プリンス・アルバート - 尿道口から亀頭上部へ抜けるピアッシング。

用語[編集]

  • アイレット - チューブ状のボディピアス。
  • アメリカンピアス - チェーンやフック形状のピアス。
  • イヤーホーン - 角型のボディピアス。
  • インサート・ニードル - 一時的にピアスホールに通すニードル。別名:インサーション, インサーションピン。
  • エクステンション・ニードル - 拡張器。
  • オービタル - 1つのピアスで2つの穴をつなぐピアッシング。
  • カーブドバーベル - 曲がったバーベルピアス。
  • キャプティブビーズリング - リング状のシャフトでボールを挟み込んで固定するボディピアス。
  • キャッチ - スタッドピアスの留め具。
  • 拡張器 - ホールのサイズを大きくする道具。
  • クロウ - 角型のボディピアス。
  • バッファロー - 牛の角の様な三日月型のピアス。
  • ゲージ - ボディピアスのシャフトの太さを表す単位。
  • サージカルステンレス - 一般的に医療用の工具に使用されるステンレス。
  • シャフト - ホールを通る部分の棒状の部分。
  • サーキュラーバーベル - リング状のシャフトの両端に2つのネジ式のボールをセットしたボディピアス。
  • スパイラルバーベル - バーベルのシャフトをくるっとねじったボディピアス。別名:スパイラルスタット、スパイラルリング
  • ストレッチング - ピアスを使い身体の一部を延ばす事。
  • フレア - 端が広がったホールピアスの一種。片側だけのハーフフレアもある。
  • フレッシュトンネル - 両側にねじ込み留め金がついたピアス。ホールピアスの一種。
  • バーベルスタット - 2つのボールをストレートのシャフトで挟んだボディピアス。別名:ストレートバーベル
  • バナナバーベル - 左右のボールサイズが違うカーブドバーベルの一種。
  • ハンガーバーベル - バーベルスタットにアクセサリーをつけたピアス。
  • ピアッサー - ピアス穴を開ける人、または器具。
  • ピアッシングニードル - ピアスを開ける為の道具。
  • ホールピアス - 筒状のピアスの総称。別名:トンネル, チューブ
  • ボールクローザーリング - リング状のシャフトでボールを挟み固定するボディピアス。
  • ホットバス - ホールのケア方法。別名:ホットソーク
  • ラブレットスタッド - 片側が平らになっているボディピアス。
  • ルーク - 耳の軟骨部の一部のピアッシング。別名:ロック
  • コーン - 円錐状のキャッチ
  • ボール - 球状のキャッチ

脚注[編集]

  1. 耳鼻科医または美容形成外科医が多く、口腔内、顎・口唇領域では歯科医師によっても行われる。
  2. ここでは「幼児のピアス装用に寛容」という意味ではなく、幼児をファッショナブルにしたいと考える保護者が、自ら意思決定できない幼児に対して装用するような例を指す。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

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